ソロ・リサイタル


    

    前編

汗をかき青春を謳歌する野球少年たちの泊まる宿で、ふとピアノの音が聞こえた。
自分も知ってる曲だな、と豊臣高校2年、鵜相は思った。

幻想即興曲。有名な曲だった。
素人でも分かる、高度なテクニックの必要な曲のはずだ。

(こんなん弾ける奴はこっち(大阪)にはおらへんかったよなあ…。)
このホテルには自分たち大阪選抜と、埼玉選抜チームしか泊まっていない。
自分たちのチームにはそんな優雅な趣味を持っている男はいなかったはずだと鵜相は不思議に思う。

そうすると、弾いているのは埼玉選抜チームの奴か。
(そういや何や知らんけどセレブなんもおったよなあ…。)

考えてみればやたら煌びやかな奴も何人かいたような気がする。
勝ち進んでいく中で、埼玉選抜は全国でもトップクラスで美形揃いと密かに評判になっていたはずだ。


多分そいつだろう、と思いながら音のするほうをなんとなく覗いてみた。

すると、そこにいたのは。


(うそやん…あれ、4番の…。)

鵜相にとって最も意外な人物がそこにいた。


埼玉選抜チームの4番打者、猿野天国だった。



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程なくして、曲が終わった。

鵜相は迷いなく拍手を送った。
音楽が分かるなどというわけではなかったが、気になるくらいにはキレイな音だと、思ったから。

その拍手に、天国は驚いたように蓮角を見た。

「すごいやんお前、えー音やったで。」

「アンタ…確か大阪の…。」

「ああ、すまんな。俺は豊臣の鵜相や。初めまして、やな。」

「あ…はい、初めまして。」
にこ、と天国は笑った。


その笑顔に、意外と整った顔をしているのに気付く。
試合中は、どちらかというとお笑いに走ってたような印象が強いだけに驚く。


「自分すごいな、めっちゃピアノ上手いやん。」

「あ…ああ、ちょっと昔やってて。ピアノ見かけたから久しぶりにと思ったんで…。
 手慰みっすよ。」
鵜相の素直な賞賛に、天国は少し照れたように笑う。

「そうなん?ちょっとのレベル越してるで絶対。」

「ははっ、ありがとっす。」

「なあ、オレリクエストしてかまへんか?」


「え?ああ、オレが弾けそうな曲なら…。」


「マジ?ええ?っしゃ!」

承諾を受けた鵜相は何を弾いてもらおうか、と思案した。


聴きたい曲、というか。
弾いている天国を長く見るための曲を、鵜相は無意識のうちに選んだ。



#######

「…何してるんや、鵜相。」

「あ、蓮角さん。」

鵜相のリクエストした曲が終盤に差し掛かる頃、こそり、と鵜相に話しかける影があった。

チームメイトの蓮角である。

「あいつのリサイタルっすよ。」

「…あれ、誰や。」

「知らへんのですか?ほら、埼玉の…。」


「あ。」


蓮角が思い出したところで、曲が終わった。


「はい、お粗末…って、あれ?アンタも大阪の…。」
ピアノを弾き終えた天国はひょこり、と鵜相の居る方に顔を出した。


その仕草が、可愛い、と思えたことに二人はどっきりとした。


「何だ、アンタも聞いてたんすか?
 何か音響いたかな〜小さくしてたんすけど…。」


「非常に可憐かつ優雅で華麗なる音色だったよ、猿野。」
「…よかった。」

その二人の後ろから別の声が聞こえた。

そちらは、天国にとっては聞きなれた声だった。


「何だ、お前らも聞こえてたの?」

天国の表情が、少し変わる。
少し柔らかくなった。


それに気付いて、大阪の二人も振り向いた。
そこにいたのは埼玉選抜チームの二人、緋慈華汰と沖だった。






                                        To be Conitinued…

相変わらず変なところで途切れててすみません;
そして結局あいも変わらずムチャクチャ時間引き延ばしててすみません…!

もう待たせているなどという状態じゃない!!とんでもないです!!
本当に本当に申し訳ありません!

続きは二日以内にUPできるようにしますので…。

隼人様、素敵なリクエスト本当にありがとうございました!


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